無形化された世界では,流動的アナログ力・固定的デジタル力の二つがあり,国家政策や学問における定説などの固定的デジタル力こそが戦略拠点となり,攻防の焦点となっていくことを述べた。いかにしてこれら戦略拠点を攻略すればよいのだろうか。

固定的デジタル力拠点の攻略戦術

長沼氏の提案しているデジタル力拠点攻略戦術は,「戦場の移動」「段差防御」「分進合撃」「(デジタル拠点を背にした)各個撃破戦術」などがあり,それらについて以下に紹介する。
流動的アナログ力を用いて固定的デジタル力拠点を攻略したい場合,大きく分けて拠点を無効化する戦術と,拠点を突破する戦術に分けられるが,「戦場の移動」「段差防御」は拠点の攻撃力や価値を無効化させる戦術と言えよう。また「分進合撃」「(デジタル拠点を背にした)各個撃破戦術」は拠点を効果的に撃破する戦術と言えるだろう。

戦場の移動

デジタル力拠点を攻略する際に,直接的に力攻めをするのではなく,無効化することで拠点を無価値にしてしまおうというのがこの戦術である。

攻撃側(流動的アナログ力)は,そういう攻略しにくいデジタル拠点を直接攻撃することを避け,むしろそれを迂回して隙間領域に進出する。そして拠点から少し離れた競争力のまだ低い場所を選んで,その未開拓領域を重要領域として開拓し,そこに自分たちの側が新しく拠点を築いてしまうのである。
このようにした上で,戦場全体を次第にそこへシフトさせてしまえば,攻守の構図が逆転し,逆に相手がこちらの拠点を奪い取るためにぶつかってこなければならないだろう。

段差防御

これは,強大なデジタル力拠点の力を削ぐために,いかにして効率的に敵の戦力を阻止するかという防御的戦術であり,以前にも述べた,自らと比して相手の戦力が格段に小規模な場合には,実力行使に躊躇してしまうという心理的効果を利用している。

すなわち相手の強大な戦力に対抗して,自らも戦力を増強するというオーソドックスな抑止力を使うのではなく,相手とは異なるレベルの戦力を用意する(相手が核ミサイルならこちらは通常兵器で,相手が通常兵器ならこちらはゲリラで)。それにより,相手に戦端を切る機会を与えず,より機動的に効率よく防御線を構築できるのである。

分進合撃

これは,上記の段差防御戦術と,流動的アナログ力特有の流動性の高さを複合した攻略戦術である。
(1) 相手が反撃を加えようと思う規模・次元よりも小さいレベルまで戦力を分散させる
(2) ただし,戦略目標としての拠点はきっちりと定めておく
(3) 小規模戦力が各個分進して相手の防御網をかいくぐって突破し,合流して拠点を攻略する。
このような手法を用いることで,相手からすると攻撃目標が小さく,はっきりせず動くに動けない。一方自らの陣営は小規模ながら分進して,同時に拠点に攻勢をかけることが可能となる。
相手からすればハエが一斉に飛んでくるような状態であり,防御は容易ではない。

(デジタル力拠点を背にした)各個撃破戦術

これは最初に述べた戦場の移動とも関わってくるが,自らが撃って出ることで攻勢を仕掛けるのではなく,相手が欲するデジタル力拠点を餌にして,相手の流動的アナログ力をおびき寄せ,個別に叩く戦術である。流動的アナログ力の短所は戦力を集中することが苦手で,パワーが分散してしまうことにある。そのため,自らがデジタル力拠点を有している場合には,相手の分散したパワーを各個撃破することで優位に戦いを進めることが可能である。

以上のような戦術を組み合わせて駆使することで,効果的に無形化戦略の攻防戦を行うことが可能となる。

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