無形化されたパワーによる拮抗状態の突破( 無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか (下) )

無形化されたパワーによる拮抗状態の突破( 無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか (下) )

(3)で紹介した無形化パワー

(i) 経済力 (=ランドパワー)
(ii) 研究機関の知的影響力 (=シーパワー)
(iii) メディアの力 (=エアパワー)

がなぜこれほどまでに力をつけてきたのだろうか。

一つには,冷戦下における西側と東側の軍事的拮抗状態を突破するための西側の戦略が成功したことが挙げられる。冷戦下においては,西側・東側両陣営が核戦力の軍拡競争を行い,一触即発の危機が続いたものの,結果として互いの目論見である軍事力を背景として相手に譲歩を迫る恫喝戦術はことごとく失敗に終わった。それは,両陣営が強力な抑止力を互いに有していたためである。

戦略核,戦術核といった破壊力が強大な兵器は,通常戦力に対しては強い抑止力を持つ。例えば,戦車部隊で国境を突破した敵に対し,戦術核で報復するといった用途である。

しかし,経済力やメディアなどの無形化されたパワーに対しては,核戦力は抑止力を持たない。経済戦争や,メディアによる報道合戦があったとしても,ただちにそれに対する報復として核戦争を誘発するという自体までエスカレートさせるのには非常に勇気が必要となるからである。その結果,無形化されたパワーは軍事的拮抗状態においても自由に行動することができ,その攻撃を受ける側は保護貿易やジャミング(電波妨害)など消極的な対応をせざるをえない。

その結果,冷戦においては西側の経済力・メディアが東側を圧倒し,最終的には東側体制崩壊という勝利を収め,無形化されたパワーというものの存在が大きくクローズアップされることとなった。

書籍購入方法

上記「無形化世界の力学と戦略」は,現在Amazonには下巻のみしかないので,購入を希望する方は通商産業社 内の長沼伸一郎氏著作物のページにご連絡ください。

下巻についてはAmazonで購入できます。

無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか (下) (単行本)

無形化世界の力学と戦略無形化世界の力学と戦略