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Posted by admin on 24 5月 2009 | Tagged as: Business + Analysis
2007年から続く経済危機の影響で,世界各国は自国通貨切り下げ・通貨増刷策をとり始めた。自国企業の救済のためや,景気対策などが主要な目的である。その世界的潮流の中で,従来のドルペッグ制をやめ,湾岸統合通貨を計画していたUAEやオマーンが相次いで和計画への不参加を表明した。また,東方拡大を続けていたユーロ圏も,各国が自国経済重視策をとり始めたことで従来の財政規律を守れずほころび始めている。ドルの崩壊が間近に迫って来ているが,可能な限りその余波を受けぬよう自国経済の切り離しに躍起になっているように見える。果たしてどの国がサバイバルを乗り切れるのか。

euro硬貨(国境のない欧州)
欧州連合は1950年代より半世紀の期間をかけ,用意周到にエネルギー・産業同盟(石炭・鉄鋼)から出発し,段階を経て現在の地位を築き上げてきた。その過程では各国の思惑の違いはあっただろうが,
などの利点があることから,各国は自国の裁量が小さくなるという犠牲を払ってまでEU,そしてユーロに加盟してきた。現在ではユーロは世界第二位の通貨にまで成長し,ハードカレンシーとして外貨準備にも加えられるようになった。(実際にはユーロの流通量の大半はEU圏内であり域内貿易の活性化という硬貨が主体である。)2000年代に入ってからは,東欧という旧ソ連圏の未開拓市場への投資と人材獲得を目指して,東欧諸国を吸収合併する形で続々と東に膨張していた。
しかし,ユーロ加盟の条件として,厳しい財政規律を求められることで必要な景気対策を打ち出せない問題,また各国が一枚岩で動くことはないため投機マネーによる通貨攻撃を防ぎきれないという問題が露呈している。
ユーロ加盟条件となっていたのは,「国家予算の赤字を対GDP比で3%以下に押さえること」と,「国家負債を対GDP比で60%以下に抑えること」,そして「過去1年間、消費者物価上昇率の最も低い3カ国の平均値を1.5%より上回らないこと」である。(マーストリヒト条約)今までも財政的に厳しいイタリアなどでは中央銀行の所有する金を売却するなどして,何とかユーロ加盟条件を満たしてきた。
また通貨としての脆弱性についてだが,ユーロは外貨準備が統合されておらず,通貨が攻撃された際に反撃として欧州中央銀行の為替介入できる裁量権が限られている。つまり日銀砲のような武器がないため,売り崩しなどの撹乱を受けやすい。
そこで今回の危機である。財政規律を厳密に守っていては,大不況・大恐慌対策など出来ない。どこかの段階で財政規律を無視してでも自国企業を助けるというような政策を取らざるを得なくなるだろう。今のところは,各国中央銀行が所有する金の売却など資産の切り売りによって通貨増刷,企業救済に動いているようであるが,今後危機が深刻化すれば一部の国がユーロ脱落することも考えられる。特に東欧諸国へ多額の投資を行っていたドイツや,バブルに沸いていたスペインなどは当分の間厳しい現実に直面するだろう。
湾岸通貨のルーツは,原油のドル決済という暗黙のルールを押し付けられていた湾岸諸国が,今後減価するとみられるドルでの支払いを嫌がったことに端を発する。当初はドル紙幣で受け取ったオイルマネーをロンドン経由で世界各地に投資を行っていたが,デリバティブ崩壊などの影響でアラブ諸国の拠出した資金は数分の一以下にまで毀損している。原油のドル決済というシステムは,瀕死のドルにとっては唯一の命綱だった訳だが,近々ドルの崩壊が予測され,それに対応するように2010年に湾岸諸国はドルペッグではない湾岸通貨を作る予定だった。しかしながら,今回の湾岸統合案はいわば「石油輸出国同盟+資産保全同盟」であり,通貨統合の目的自体が,EU圏内のように域内貿易を活性化させるといった波及効果を狙ったものではないため,統合への意欲に欠けている。また産業構造の違い(対外債権国(UAEやクウェート,カタールなど)か,対外債務国(サウジアラビアなど)か,原油輸出への依存度の違い)などから,誕生する新通貨へのビジョンも異なることから亀裂が生じていた模様だ。
ユーロ圏を参考に,通貨統合の条件を調べてみると,以下のような項目が考えられるようだ。
東アジア域内は,貿易が活発に行われており,EUのように域内貿易に東アジア通貨を使うことで関税節減による市場拡大を期待できることは確かだが,現時点では障害も多い。各国の経済規模や物価上昇率の乖離が大きく,今のまま統合しても一部の地域はバブル,一部の地域はデフレという状態に陥ると考えられている。(東欧・北欧バブルとドイツのデフレのようなもの)。また各国内でそこまで東アジア通貨を希求する声はまだ上がっておらず,今から始めても準備に数十年は要するであろうこと。また経済規模も今後のアジアの成長を考えれば,EUの数倍の経済規模になることが予想され,どこまでコントロールできるか未知数であることなどが考えられる。
一方で,BRICS諸国間ではロシアのルーブルと中国の人民元を「ドルを介さずに」交換できるようにしたりと中国を中心に積極的にドル抜きでの交易体制を築こうとしている。今回の危機で,米国・ロシア・東欧などは大打撃を受けているが,中国だけは虎視眈々と世界各国と資源外交やバラマキなどの交渉を続けており,世界一の外貨準備を武器に危機後の世界で主導権を奪う準備が整いつつあるようである。
UAE、湾岸通貨統合への不参加を表明
[ドバイ 21日 ロイター] アラブ首長国連邦(UAE)は20日、湾岸協力会議(GCC)加盟国が長らく進めてきた通貨統合計画からの脱退を表明した。これを受けて、通貨統合実現の可能性だけでなく、統合が持つ影響力が疑問視されている。GCC加盟6カ国は、10年近くかけて通貨統合を協議してきた。しかし、すでにオマーンが脱退を表明。UAEで2カ国目となる。今回のUAEの不参加によって、GCCの通貨統合計画は崩壊しないまでも勢いを失ったとの声がでている。
UAEの脱退は、統一中央銀行の設立場所がサウジアラビアに決定したことに関係しているとみられている。
Dollar’s power accepts no alternatives whatsoever
A crisis is not a good time for seeking alternatives to the US dollar. Most likely, the dreams about new regional currencies will be put aside. The countries, which originally supported those ideas, gradually change their minds. The United Arab Emirates refused to participate in the Arab currency union. The expansion of the euro zone is not likely to happen in the nearest future. The Russian ruble is no longer ambitious either.The subject of new alternative reserve currencies appeared when the crisis was gathering pace. Numerous publications reported about the possible introduction of the new currency in North America, the Amero. The Russian government put forward the idea to make the Russian ruble become a regional reserve currency too.
It seems that the subject of new currencies has been pushed into the background now. Many experts said that it would be extremely difficult and even impossible to launch such massive projects during the time of the crisis.
Official spokespeople for the foreign ministry of United Arab Emirates stated Wednesday that the nation would not be a part of the currency union in the Gulf, RIA Novosti news agency reports.
The decision to establish the Arab currency zone was made several years ago by Saudi Arabia, the United Arab Emirates, Kuwait, Bahrain, Qatar and Oman. Oman has already pulled out from the agreement. The UAE’s refusal to participate in the currency union of the Persian Gulf weakens the monetary unity of the Arab countries of the region.
The decision is based on purely economic reasons for there are no political differences between the countries. The refusal to take part in the union is most likely connected with the economic crisis. It is worthy of note that many key issues – the budget deficit restriction, the inflation rate and many other macroeconomic indexes – remain unsolved.
The euro, for example, retains its current position owing to the fiscal discipline of the members of the European monetary union. The countries of the euro zone observe the stability and development agreement, which restricts budget deficits (three percent of the GDP is the maximum) and sovereign debts (60 percent of the GDP) of the members of the currency bloc. That is why the present members of the euro zone were highly skeptical about the expansion of the European Union under the conditions of the crisis.
The euro was introduced to simplify the turnover of commodities between the European states: together these countries make a self-sufficient region. Unlike Europe, the Arab states are focused on the export of their products to the West and to Asia. Therefore, the introduction of the joint currency may not produce the desired effect.
Darya Yurischeva
Posted by admin on 02 5月 2009 | Tagged as: Business + Analysis

2007年からの金融危機に伴い,Tax Haven ( 租税回避地 ) と呼ばれ世界中の資金のプール先として栄えたケイマン諸島やルクセンブルクが窮地に陥っている。米国やドイツ,フランスなど巨額の損失を抱えた諸国が,Tax Haven諸国に対して顧客情報開示を迫り,巨額の資産を隠してきた資産家たちは泣く泣く追徴課税を支払うか,資産を放棄するかを迫られている。
米国政府説明責任局によれば,以下のように定義されている。
(1) no or nominal taxes; 無税かほぼ無税
(2) lack of effective exchange of tax information with foreign tax authorities; 海外の税務当局に対し課税に関する情報交換が不十分
(3) lack of transparency in the operation of legislative, legal or administrative provisions; 立法・行政条項が不透明
(4) no requirement for a substantive local presence; 現地法人である必要がない
(5) self-promotion Tax Havenとして自己宣伝を行っている
あくまで米国の見解だが,以上の内容から判断すると,自ら進んでTax Havenとして宣伝し資金を誘導しようとしてるペーパーカンパニー歓迎の無税・低税率の国家や地域が該当する。
また,地政学的に安定した地域(戦争の影響を受けにくい永世中立国や太平洋,カリブ海)や,情報インフラ・人的インフラの整った地域(語学力,ネットなどのインフラ)に多い。
かつて1960年代にTax Havenであったレバノンのベイルート,リベリア,モロッコのタンジールなどの地域はどこも内戦や混乱に巻き込まれTax Havenとしての魅力を失い,経済的に見捨てられた地域となった。現在,太平洋・カリブ海諸国が選ばれているのもそうしたリスクを恐れてのことだろう。
Tax Havenという概念自体は,古代より脈々と存在する。他地域より租税を優遇することで商業を振興しようとした通商同盟や,自治都市などである。近年のTax Havenがここまで巨大化するに至った理由の一つは,金融の情報化にあるといえよう。例えば日本で小口証券化として一世を風靡したJ-REITなどの不動産ファンドなどでも当たり前のようにケイマン諸島にペーパーカンパニーを置いて事業を行うようになっていた。
ケイマンSPC
ケイマン諸島の法律に基づき組成される会社のこと。慈善信託を使用することにより特定出資を行ったものからの恣意的な倒産が隔離されることにより設立されることが多い。新SPC法の成立に伴い、特定持分を使用することにより同様の効果があることから、今後は減少するものと考えられる。
このように,自国の法律が事業に向いていないと判断した場合には,国籍移動というアービトラージを用いて事業に利用するというのは,世界の船籍の大半がパナマやリベリア籍になっているのと同様,ビジネスにおいては一般的である。
2009年4月2日のG20にてTax Haven諸国のブラックリストが作成された。
(1) 国際課税基準に事実上従っていると見なせる諸国
Argentina, Australia, Brazil, Canada, China, Czech Republic, France, Germany, Greece, Guernsey, Hungary, Ireland, Italy, Japan, Jersey, Isle of Man, Mexico, the Netherlands, Poland, Portugal, Russia, Slovakia, South Africa, South Korea, Spain, Sweden, Turkey, United Arab Emirates, United Kingdom, and the United States
(2) 国際課税基準に従うと言ってはいるものの遵守していないTax Haven諸国
Andorra, the Bahamas, Cayman Islands, Gibraltar, Liechtenstein, and Monaco
(3) 国際課税基準に従うと言ってはいるものの遵守していない金融センター
Chile, Costa Rica,[51] Malaysia,[51] the Philippines[51] Singapore, Switzerland, Uruguay[52] and three EU countries – Austria, Belgium, and Luxembourg
Tax Havenであることによって飯を食っていた諸国も,結局は大国の言いなりになり,国際課税基準に従わされることになるようだ。もとはと言えば欧米金融資本が練り上げたカラクリの片棒を担ぐことで発展してきた地域ばかりである。あくまで金融資本たちに気に入られるよう知恵をつけてもらって繁栄を謳歌させてもらっていた訳で,今になって反旗を翻すことも出来ないというのが本音であろう。今回の大幅なTax Havenの整理縮小は,レバレッジを駆使した金融戦線の一時縮小を狙う欧米金融資本のビジネスモデルの転換を象徴している。この地殻変動によって,地下(Tax Haven)から地上(欧米金融機関・国庫など)へ吹き出すマネーをどこに注ぎ込むつもりなのかが今後の焦点である。
過去の歴史から察すれば,大恐慌の後は国家主導の大規模公共事業(インフラ事業や戦争)を行い需要を無理矢理生み出して円満解決となるわけだが,果たして今回も同じ歴史を繰り返すことになるか?