日曜日, 5月 17th, 2009

無形化世界の戦略論 (10) 無形戦略拠点を攻略するには?

admin 17 5月 2009 | : Strategy + Geopolitics

無形化された世界では,流動的アナログ力・固定的デジタル力の二つがあり,国家政策や学問における定説などの固定的デジタル力こそが戦略拠点となり,攻防の焦点となっていくことを述べた。いかにしてこれら戦略拠点を攻略すればよいのだろうか。

固定的デジタル力拠点の攻略戦術

長沼氏の提案しているデジタル力拠点攻略戦術は,「戦場の移動」「段差防御」「分進合撃」「(デジタル拠点を背にした)各個撃破戦術」などがあり,それらについて以下に紹介する。
流動的アナログ力を用いて固定的デジタル力拠点を攻略したい場合,大きく分けて拠点を無効化する戦術と,拠点を突破する戦術に分けられるが,「戦場の移動」「段差防御」は拠点の攻撃力や価値を無効化させる戦術と言えよう。また「分進合撃」「(デジタル拠点を背にした)各個撃破戦術」は拠点を効果的に撃破する戦術と言えるだろう。

戦場の移動

デジタル力拠点を攻略する際に,直接的に力攻めをするのではなく,無効化することで拠点を無価値にしてしまおうというのがこの戦術である。

攻撃側(流動的アナログ力)は,そういう攻略しにくいデジタル拠点を直接攻撃することを避け,むしろそれを迂回して隙間領域に進出する。そして拠点から少し離れた競争力のまだ低い場所を選んで,その未開拓領域を重要領域として開拓し,そこに自分たちの側が新しく拠点を築いてしまうのである。
このようにした上で,戦場全体を次第にそこへシフトさせてしまえば,攻守の構図が逆転し,逆に相手がこちらの拠点を奪い取るためにぶつかってこなければならないだろう。

段差防御

これは,強大なデジタル力拠点の力を削ぐために,いかにして効率的に敵の戦力を阻止するかという防御的戦術であり,以前にも述べた,自らと比して相手の戦力が格段に小規模な場合には,実力行使に躊躇してしまうという心理的効果を利用している。

すなわち相手の強大な戦力に対抗して,自らも戦力を増強するというオーソドックスな抑止力を使うのではなく,相手とは異なるレベルの戦力を用意する(相手が核ミサイルならこちらは通常兵器で,相手が通常兵器ならこちらはゲリラで)。それにより,相手に戦端を切る機会を与えず,より機動的に効率よく防御線を構築できるのである。

分進合撃

これは,上記の段差防御戦術と,流動的アナログ力特有の流動性の高さを複合した攻略戦術である。
(1) 相手が反撃を加えようと思う規模・次元よりも小さいレベルまで戦力を分散させる
(2) ただし,戦略目標としての拠点はきっちりと定めておく
(3) 小規模戦力が各個分進して相手の防御網をかいくぐって突破し,合流して拠点を攻略する。
このような手法を用いることで,相手からすると攻撃目標が小さく,はっきりせず動くに動けない。一方自らの陣営は小規模ながら分進して,同時に拠点に攻勢をかけることが可能となる。
相手からすればハエが一斉に飛んでくるような状態であり,防御は容易ではない。

(デジタル力拠点を背にした)各個撃破戦術

これは最初に述べた戦場の移動とも関わってくるが,自らが撃って出ることで攻勢を仕掛けるのではなく,相手が欲するデジタル力拠点を餌にして,相手の流動的アナログ力をおびき寄せ,個別に叩く戦術である。流動的アナログ力の短所は戦力を集中することが苦手で,パワーが分散してしまうことにある。そのため,自らがデジタル力拠点を有している場合には,相手の分散したパワーを各個撃破することで優位に戦いを進めることが可能である。

以上のような戦術を組み合わせて駆使することで,効果的に無形化戦略の攻防戦を行うことが可能となる。

書籍購入方法

上記「無形化世界の力学と戦略」は,現在Amazonには下巻のみしかないので,購入を希望する方は通商産業社 内の長沼伸一郎氏著作物のページにご連絡ください。

下巻についてはAmazonで購入できます。

無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか (下) (単行本)

無形化世界の力学と戦略無形化世界の力学と戦略

無形化世界の戦略論 (9)デジタル力とアナログ力

admin 17 5月 2009 | : Strategy + Geopolitics

無形化世界の勢力図を可視化するためには,どのような無形の戦略拠点が存在し,それらの拠点を誰が押さえているのかを考えることが必要である。

デジタル力とアナログ力

まず,拠点獲得をねらうパワーの側に焦点を当ててみよう。パワーには,マネーや情報のように極めて流動性が高く,速度の速いものから,核兵器などのように一朝一夕では手に入れることが出来ず鈍重なものまで多岐に渡る。長沼氏によれば,それらのパワーには一定の法則があり,

パワーの流動性が高くなれば機動性が向上して有力なパワーとなる。ところがその流動性が高くなりすぎると,自身の中に力学を作り出すことが出来ず,かえって鈍重なパワーに戦略を支配されてしまう。

という。

そのため,いかに経済力やメディアが無形化パワーとして肥大化しようとも,依然として鈍重な国家などの意向を無視することは出来ず,常に行動を束縛される結果となっている。

軍事力などの従来型パワーの間隙を縫うようにして,無形化パワーが浸透・席巻することで無形化世界は拡大を遂げてきた。しかし,無形化パワー自体は政治・外交などの目標達成のための一手段に過ぎず,それ自体が戦略目標・戦略拠点とはならない。無形であるがゆえに拠点というべき確固たる戦略目標を定めづらいためである。

以上に記したパワーの特徴から,長沼氏は世の中には二種類のパワーがあると述べている。それは,

  • 固定的デジタル力
  • 流動的アナログ力

の二つであり,固定的デジタル力は従来から存在する政治や軍事などの「1か0か」で明らかに結果をかえる能力のある力である。例えば,政治でいえば「1(国交を結ぶ)」「0(国交を断絶する)」といった,社会全体に大きな影響を与えうる決断を下せる能力が,固定的デジタル力には存在する。

そして,流動的アナログ力は経済力などの,日々上がったり下がったりを繰り返し,ある時点でガラッと社会を変化させうる能力に欠けるパワーのことをいう。いかに流動的アナログ力である経済力を拡大したとしても,固定的デジタル力の代表である国家が一つ規制法案を作られてしまえばたちどころに窮してしまうというのも,デジタル性(拠点)に欠けるがゆえの欠点である。

以上のことから,無形化世界においても結局のところ戦略拠点となりうるのは,「1か0か」のデジタル性を有する目標であり,デジタル拠点ということになる。無形化陸軍に相当する経済力においての戦略拠点は基軸通貨であり,無形化海軍に相当する知的機関ならば戦略拠点は学会や会議における定説定論である。

これら戦略拠点はひとたび獲得することが出来れば,他者に対して圧倒的な示威力・発言力・強制力を持つ。一企業レベルでいえば,日々の流動的な戦術目標は売り上げアップというエンドレスな戦いであるが,その後得られる果実としての「業界標準や世界標準規格」は他社を市場から追放できるほどの威力を持っている。これは国家レベルでも同じことであり,G20や国連などの国際会議で一度既成事実として方針が決まってしまえば,それを一加盟国レベルで覆すことはきわめて難しい。このような無形戦略拠点が何であるかを見抜き攻略する,あるいは攻略できないならば無効化するというのが今後の戦いの焦点となっていくだろう。

無形化世界において,これらの戦略拠点をいかに攻略していくかについて今後紹介したい。

書籍購入方法

上記「無形化世界の力学と戦略」は,現在Amazonには下巻のみしかないので,購入を希望する方は通商産業社 内の長沼伸一郎氏著作物のページにご連絡ください。

下巻についてはAmazonで購入できます。

無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか (下) (単行本)

無形化世界の力学と戦略無形化世界の力学と戦略