無形化世界の戦略論 (8) 知的制海権

Posted by admin on 04 4月 2009 | Tagged as: Strategy + Geopolitics

無形化世界においては大学・シンクタンク等の研究機関は海軍(シーパワー)に相当する。
シーパワーの重要性,そして制海権の重要性が認識されるに至った経緯は,以下のようなものである。

それは文明そのものが農業文明の停滞状態を脱し,産業社会に突入して経済規模の拡大に次ぐ拡大を続けることに伴って起こった。つまり通称の規模も経済の拡大に比例する形で増大せざるを得ず,陸上輸送より格段に効率の良い海上輸送に依存していかなければ,その膨れ上がる通商活動を支えていけなくなったからである。

資源すべてを海外に求めず自国内で調達できるという幸運には滅多に期待できないため,どうしても海上に生命線が発生し,その生命線を維持するための商船隊とそれを護衛できる海軍力は,国家にとって不可欠な存在となったのである。
無形化世界の力学と戦略

鉄道が世界中に張り巡らされるようになった近代までは,最もそして圧倒的に効率の良い輸送手段は船であり続けた。資源を持たない小国は,交易によって資源を獲得せざるを得なかった。また相対的に人口が少ないため,ランドパワーから自国を防衛するためには制海権を奪取し,バランサーとして複数のランドパワーとの合従連衡を繰り返す外交戦略が必要だった。そういう経緯を経て,シーパワーの「マンパワーは小さいが,間接的に海上支配を通じて生活圏に影響を与える」という特徴が生まれていった。

無形化世界での制海とは

長沼氏によれば,無形化世界における死活的に重要な資源は「知的資源」であり,産業基盤を支える技術ノウハウやそれを運用する技術者こそが現代国家の生命線であるという。
そして,無形化世界における制海を以下のように定義している。

思索のレベルが上がっていくと,そこには次第に一種の哲学というものが要求されるようになっていく。このレベルになっていくと,そうした哲学なり思想なりを作れるものの影響力というものは極めて強力であり,技術体系や社会制度そのものがそれに支配されて動いていくこともまれではない。

そういう思想をリードし,維持する存在があったとすれば,その影響力を巡って一つの戦略力学が発生するのであり,まさしくその存在こそが,無形化世界において「制海」に任ずる存在だと言うことになる。無形化世界の力学と戦略

この知的制海権を所有している国と,持たざる国との大きな違いは何か。一言で言えば,正統性を主張できるか否かということになろう。知的制海権を所有する国(例えば20世紀のアメリカ)は,自らの正統性を疑うこともなく,思想や技術・政治システムを発展させ続けることが可能である。また,もし自らの覇権に挑戦してくる敵が現れた場合,率先してルールを変えてしまうか,中世ヨーロッパのローマ教皇のごとく異端の烙印を押してしまうことが可能である。

長沼氏は,この知的制海権による知的資源の供給ラインを「知的シーレーン」と呼び,戦略物資の補給線として極めて重要な役割を果たしていると指摘している。例えば,ある国が他国と無形化された戦争状態(経済戦争や情報戦争など)にある場合に,前線支援のため大量の知的資源ー学問・思想・哲学・技術などーを継続的に補給し続けなければならない。それは,経済力(ランドパワー)もメディア(エアパワー)のどちらも,新規技術や情報による後押しがなければ,徐々に消耗し前線にて孤立せざるを得なくなるからである。そうした場合に,知的シーレーンを確保していた場合にはスムーズに知的戦略物資を補給出来るのに対し,知的シーレーンを喪失していた場合は孤立した前線ではかなりの苦戦が予想される。

このことは,無形化された戦争における自陣営の防衛戦略に対しても言えることであり,メディアによる情報制空権を突破するためには,その敵陣営の補給路である知的シーレーンを奪うことが戦略上の要となる。すなわち,画期的発明や画期的思想(とその発明者・思想家)といった知的資源を結実できるレベルまで育てあげ,国際舞台でのプレゼンスを高め,自陣営の思想や手法の正統性を主張することこそが求められる。
 

異端審問

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無形化世界の力学と戦略無形化世界の力学と戦略

土作り (2) クローバー栽培

Posted by admin on 04 4月 2009 | Tagged as: Farming

クローバーの効用

クローバー(英:Clover)は、マメ科シャジクソウ属(トリフォリウム属、Trifolium)の多年草の総称。一般的にはシロツメクサを指すことが多い。約300種が全世界に分布する。シャジクソウ属の多様性は北半球において最も高いが、南アメリカやアフリカにも多くの種が分布している。
重要な蜜原植物であり、クローバーの蜂蜜は世界で最も生産量が多い。葉は茹でて食用にすることもできる。花穂は強壮剤、痛風の体質改善薬などとして用いられていた。解熱・鎮痛効果もあると言われている。クローバー wikipedia

緑肥として有効なクローバーの種類

クローバーと一言で言っても,その種類は300類に及ぶ。緑肥としてすき混み用に使うクローバーはどのようなものがよいのか,ネットで調べてみた。
雪印では,緑肥や牧草の種の研究を昔からやっているが,参考になる。

シロクローバは、本来は中性で肥沃な土壌を好みますが、アカクローバと同様に多少の不良環境でも生育しやすいため、北海道において広く利用されているマメ科牧草の一つです。

シロクローバはマメ科牧草であるため、タンパク質やミネラル含量が高く、共生する根粒菌の働きによって土壌に窒素を供給する役割もあります。さらに、匍匐茎で広がる特性から、草地にできる裸地をうめて雑草の侵入を防ぐ目的で利用される場合もあります。シロクローバは様々な用途に利用できるマメ科牧草といえます。

<シロクローバには3つのタイプがあります>
シロクローバは葉の大きさにより大葉型、中葉型、小葉型の3つのタイプがあります。葉が大きいほど生育が旺盛であり、混播するイネ科牧草によってシロクローバのタイプを使い分ける必要があります。競合力が強い大葉型は、主にオーチャードグラス、ペレニアルライグラスなど競合力が強いイネ科牧草との混播に適しています。中葉型は主にチモシーの極早生、早生品種との混播に適しています。小葉型は主に競合力が弱いチモシーの中生、晩生品種との混播に適しています。
また、シロクローバは混播するイネ科草種や品種だけでなく、利用目的(採草、放牧)によっても使い分けられています。例えば、葉が小さいほど短草条件で密度が高く生育が良好なことから、放牧利用には小葉型~中葉型が多く利用されています。
シロクローバの使い分けについては、地域や播種時期、土壌条件などによっても様々です。例えば、根釧などの冷涼地域ではマメ科牧草が衰退しやすいため、チモシーの早生品種に大葉型のシロクローバを混播する場合もあり、逆にチモシーがマメ科牧草に抑圧されやすい条件では、チモシーの早生品種に小葉型のシロクローバを混播する場合もあります。

大葉,中葉,小葉各種クローバの混播

大葉型品種はルナメイとカリフォルニアラジノがあります。最も葉が大きいカリフォルニアラジノは、主にオーチャードグラスなど競合力が強いイネ科牧草との採草利用に適しています。ルナメイは大葉型ですが、大葉型のなかでは葉が小さく、中葉型に近いタイプであるため、オーチャードグラスとの採草利用のほか、オーチャードグラスやペレニアルライグラスとの放牧利用に適しています。
中葉型品種はソーニャ、フィア、マキバシロ、リースリングがあります。同じ中葉型ですが、葉の大きさや競合力はそれぞれやや異なります。リースリングは中葉型のなかでは競合力が強く、大葉型に近いため、オーチャードグラスとの採草利用のほか、オーチャードグラスやペレニアルライグラスとの放牧利用に適しています。マキバシロも競合力がやや強く、チモシーの極早生や早生品種との採草利用のほか、オーチャードグラスやペレニアルライグラスとの放牧利用に適しています。ソーニャやフィアは最も標準的なタイプで利用範囲が広く、チモシーの極早生、早生や中生品種との採草利用のほか、オーチャードグラスやペレニアルライグラスとの放牧利用に適しています。
小葉型品種はリベンデルとタホラがあります。小葉型は最も生育が穏やかであるため、チモシーの早生、中生や晩生品種との採草利用のほか、チモシーの晩生品種との放牧利用に適しています。

クローバの種類シロクローバの特性と品種について @雪印

福岡正信氏が,稲作の際ラジノクローバーとの混播を推奨していたが,あえてラジノクローバーを選んだ理由は,上記のイネ科植物との競合力の強さにあると考えられる。私は,野菜との混播予定なので,大型種であるラジノは避けて,中型・小型種である,フィアを使用した。中型・小型種は,ほふく性が強く,あまり上に立たないようなので,野菜の生長を妨げることが少ないのではないかと考えている。

土作り (1)

Posted by admin on 04 4月 2009 | Tagged as: Farming

観察日記

いま棚田を改修して作った市民農園を借り,無農薬野菜作りの実験を行っている。試行錯誤をしながら土壌の状態がどう変わるかを観察しているが,やはり農業は自然が相手なので一朝一夕では結果は出ない。最低でも数年がかりの経験と勘の蓄積が必要になるだろう。その実験記録として観察日記を始める。
実際に土作りを行ってみて,土壌の状態についていくつか分かったことがある。

1.雑草の生い茂る部分の土は,虫やミミズが多く,意外に土がふかふかして柔らかい。田んぼ特有の粘土質な土の隙間に細かい根が広がっており,空気の層ができているからだと考えられる。
逆に完全に耕してしまった部分は,土本来の粘土質の形質が強く出過ぎてしまい,余計に水はけが悪くなってしまった。雨が降るとぬかるみになり,日照りが続くとカチカチになってしまう。土作りには「何も植物がない」という状態が一番よくないようだ。

2.肥料の一環として米ぬかを撒いてみたが,1週間ほどで米ぬかの周りに白い菌糸のようなものが広がり,徐々にだが分解されているのが分かる。特に微生物(ボカシのもとなど)を投入しなくても,土本来の微生物が分解してくれる。その方が土着菌を生かすことになるので生態系を考えると好ましいだろう。

3.粘土質な土には落ち葉の投入が効果的だった。粘土質の土の欠点は,土壌の粒子が細かすぎて粘着質になり,水はけが悪く,土が窒息してしまうことである。そのため,繊維質である落ち葉を投入すると,土の間に無理矢理間隙が生じ,水はけが改善した。

今後の予定

現在参考にしているのは,福岡正信氏の自然農法と,永田照喜治の永田農法である。どちらも完璧にやる気は無いのだが,その思想とノウハウは勉強になる。土地ごとによって向き不向きもあるだろうと思うので,いいとこ取りをしていければと考えている。どちらも本で読んだだけなので大雑把にしか知らないので,概略だけ。

福岡正信氏の自然農法

基本は無農薬・無肥料・無耕起の力いらず農法である。その代わりとして,知恵を使う。

  • 肥料を使わない代わりとして,食べる部分以外を土に返すこと。
  • ラジノクローバーなどのマメ科植物を緑肥として使用する。それによって窒素の固定化を行う。
  • 上記クローバーなどを栽培することによって,雑草の抑制と,土壌の改良の両方を同時に行ってしまう。つまり,クローバーで地面をカバーすることで有害な雑草の繁殖を防ぎ,クローバーの根が広がることによって無耕起でも土を柔らかいままに維持できる。

言われてみればもっともなことばかりだが,そうそううまくいくものでもないらしく,実際には臨機応変に農薬なども使っても良いらしい。農業は自然相手なのでマニュアル化というよりは,臨機応変さが要求されるのだろう。

永田照喜治の永田農法

永田農法は,与える水を極力最小限にし,野菜本来の生命力を最大限に利用する農法。雨水がかからないように畑には覆いをし,肥料については野菜の根が吸収するには液体の方が効率がよいとして液肥を使う。

  • 土作りはケイ酸カルシウムによってPH調整を行い,液肥を施すのみ。畝は高めに作る。
  • 苗を植え付ける際には,根を1/3ぐらいまで切り落とし,土を洗い落としておく。こうすることで,新たな根が伸びやすく,また新しい土に馴染みやすいとのこと。余分な肥料を洗い流すことで,施肥を正確にできるというメリットもある。
  • 病虫害防止のため水がかからないように,覆いをつける。
  • 水やりは野菜がしなびる頃に行い,水やりの時に液肥の施肥も行う。

無形化世界の戦略論 (7) メディアによる情報制空権

Posted by admin on 04 4月 2009 | Tagged as: Strategy + Geopolitics

メディアによる制空権

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無形化世界においてはメディアは空軍(エアパワー)に相当する。エアパワーの特徴は

エアパワーは空中において運用される能力であるため、陸海における権力とは本質的に特性が異なっており、地形の制約を殆ど受けないために世界中どこへでも迅速に展開することが可能である。つまりエアパワーはランドパワーやシーパワーと比較して速度、範囲、機動性、突破・打撃能力が圧倒的であり、現代の軍事力の主要な構成要素であると考えられている。エアパワー@wikipedia

であり,少数精鋭の部隊が迅速に行動し,効果的に打撃を与えることが出来る。一方その特性ゆえに,長期間に渡って拠点を維持するのには不向きな兵種と言える。

無形化世界でのメディアの役割

テレビやラジオ,新聞,インターネットなどのメディアは,当初の目的である「情報伝達」の役目を超え,現在ではコマーシャルに代表される「前線支援のための宣伝機関」としての役割が増大している。ここでいう前線とは,企業でいえばマーケティングなどの消費者争奪戦であり,国家でいえば外交問題・軍事問題などの主導権争い(プロパガンダ)である。

この宣伝合戦において,自らの宣伝効果を高め,相手の宣伝効果を下げようとしてために考え出されたのが,視聴者に届く情報路を支配してしまえばよい=「情報制空権」を奪取するというアイデアである。企業の例でいうと,情報制空権を有していればライバル企業の情報を遮断し,効率よく自社の製品のPRを行うことが可能となる。

この情報制空権争いは,第二次世界大戦期のナチスドイツや東西冷戦においても行われ,スポーツや映画,音楽などありとあらゆる媒体が使われた。目的は自陣営の結束強化(ナショナリズムや方向性提示),敵陣営の残虐無比さを喧伝するためである。冷戦期においては,西側の娯楽電波が無形化されたパワーとして東側諸国の家庭にまで浸透し,東側の自壊を誘発させる結果となった。

メディアの高度とターゲット

長沼氏によれば,メディアの制空権争いには以下の二種類の高度があるという。

  • 高高度:国際政治などのいわゆる「高級」なテーマ
  • 低高度:新聞の三面記事や大衆芸能,スポーツなどの大衆向けの「低級」なテーマ

このうち,高高度のメディアとは,国際政治や外交などの目的を達成すべく動員されるインテリジェンスの範疇とも言えるメディアであり,政府・国家をターゲットとしたものである。高高度メディアは政治組織の支援などの目的がはっきりしているため,視聴者の行動意欲をかき立てることが出来るように,情報は正確に絞り込まれている。

一方低高度のメディアとは,娯楽やスポーツなどを通じて大衆の「視聴率」を奪い合うためのものであり,どれだけの人を釘付けに出来るかが焦点となる。そのため,この低高度メディアは大衆の好みそうな情報を断片的にばらまくだけであり,その視聴者に行動意欲を湧かせることは出来ず,むしろ情報過多によって世の中を冷笑的・不活性なものへと変えていく。

メディアによる陳腐化

メディアの世界に(6)の運動量一定則を適用するとどのような事象が推測されるのだろうか。
メディアは経済力のおよそ10倍の速度があり,ひとたびキャンペーンを打てばその圧倒的なエアパワー(情報の絨毯爆撃)によって情報の拡散と陳腐化が生じる。そのため,本来事業を成就させるために必要な時間の1/10の時間で,支援を受けた事業は陳腐化されてしまい,事業としての魅力を喪失してしまう。

例えば,昨今のマスメディアによって取り上げられ,ブームとなった商品(ナタデココや納豆などもそう)が瞬く間にブームが去り,その商品を生産・販売する企業が窮地に陥るという現象もこの破壊的な陳腐化によるものだろう。これが全社会的に起これば,社会の起爆剤となるべき新発見・新発明・新概念でさえ,ブームになってはあっという間に過去の遺物と見なされてしまう。そのため,それら新発明や新概念が地に足のついた普及と定着をする前に,飽きられ,社会の活力を削ぐ一因となっている。

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無形化世界の戦略論 (6) 運動量一定の法則

Posted by admin on 25 3月 2009 | Tagged as: Strategy + Geopolitics

(5)にて他者を自分の意のままにコントロールする力のことをパワーと呼ぶと書いた。従来は他国をコントロールしようとした場合,物理的軍事力に頼ることが多かったが,現在は徐々に無形化世界における戦争(経済戦争・知的闘争・情報制空権争奪戦)へと移行しつつある。旧来の軍事力と,無形化世界でのパワーを定量的に比較する指標として,長沼氏が掲げるのが「運動量一定の法則」である。

軍事部門というものは国家の経済部門の1/10の大きさや体重しか持たないが,それは経済部門の10倍の早さで動く能力をもつ。そのため国境線や勢力範囲を圧迫する能力において経済力に劣らない力を持ちえるわけだが,これはどこか前のテコの話を連想させる。つまり二つをかけた値は結局常に等しくなってしまうのではないかと予想したくなるのである。

経済力をもって相手国を屈服させようとする場合,それは軍事部門よりも一桁多い人数からなる経済社会全体の力を用いることが出来るわけだが,経済的世界は軍事的世界よりも一桁遅い速度でしか動けない。このため10倍の長さの時間がかかってしまうという欠点はあるものの,相手を圧迫するのは両者の積の力であるため,国境線を移動させたり国そのものを屈服させるという点では等しい効力を持ちえるということになる。

体重×速度で示される「運動量」が変化しないという「運動量保存則」あるいは「運動量一定の法則」が経済部門と軍事部門の間で成り立っているとの仮説が成り立つわけである。
無形化世界の力学と戦略
※ここでいう,「体重」とは動員できる構成員の数であり,「速度」とは相手国を消耗させる速度のことである。

この法則から,もし通常の戦争と,経済戦争が相手国に与える消耗の速度比が1:10ならば,

軍事のパワーと経済のパワーの換算を行う場合,一般に後者は前者の10倍のサイズを持っていて1/10の速度で動く
無形化世界の力学と戦略

と長沼氏は述べている。この法則によって,無形化世界における戦争を可視化しようと試みた場合に,戦況が変化する速度を定量的に推測できる。この議論については永井俊哉氏のサイトで批評がなされているが,無形化世界のパワーゲームの状況把握に使うならば,指標として使えると思う。

現在,世界経済は大恐慌に突入しつつある。海外の記事(Foreign Affairsなど)を目にしていても,
2008: The Great Crash
2009: The Great Recession
2010: The Great Depression 2.0
というような見出しが躍っている。この経済動乱もまた一種の無形化された世界大戦の一端を示している。経済戦争,情報戦争(に加え,小規模紛争・テロなど)による混乱は,無形化世界の勢力図をどのように書き換えているのか。通貨戦争,貿易戦争,情報戦争などの無形化世界での戦闘は,冷戦と同様に数十年継続する戦いになるのか,目が離せない。

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無形化世界の戦略論 (5) パワーとは何か

Posted by admin on 22 3月 2009 | Tagged as: Strategy + Geopolitics

今まで述べてきた,ランドパワー・シーパワー・エアパワーなどの地政学用語について補足しておきたい。そもそも,地政学・政治学・軍事学上で用いられるパワーとは,何なのだろうか。Wikipediaを引いてみると,

Political power (imperium in Latin) is a type of power held by a group in a society which allows administration of some or all of public resources, including labour, and wealth. There are many ways to obtain possession of such power. At the nation-state level political legitimacy for political power is held by the representatives of national sovereignty. Political powers are not limited to heads of states, however the extent to which a person (such as Joseph Kony, Subcomandante Marcos, or Russell Means) or group such as an insurgency, terrorist group, or multinational corporation possesses such power is related to the amount of societal influence they can wield, formally or informally. In many cases this influence is not contained within a single state and it refers to international power.

Political scientists have frequently defined power as “the ability to influence the behaviour of others” with or without resistance.
For analytical reasons, I.C. MacMillan[1] separates the concepts power

Power is the capacity to restructure actual situations.
—I.C. Macmillan
and influence

Influence is the capacity to control and modify the perceptions of others.
—I.C. Macmillan
Political Power @wikipedia

Power projection (or force projection) is a term used primarily in American military and political science to refer to the capacity of a state to conduct expeditionary warfare, i.e. to implement policy by means of force, or the threat thereof, in an area distant from its own territory. The United States Department of Defense, in its publication J1-02: Department of Defense Dictionary of Military and Associated Terms, further defines power projection as

The ability of a nation to apply all or some of its elements of national power – political, economic, informational, or military – to rapidly and effectively deploy and sustain forces in and from multiple dispersed locations to respond to crises, to contribute to deterrence, and to enhance regional stability. [1]

This ability is a crucial element of a state’s power in international relations. Any state able to direct its military forces outside the limited bounds of its territory might be said to have some level of power projection capability, but the term itself is used most frequently in reference to militaries with a worldwide reach (or at least significantly broader than a state’s immediate area). Even states with sizable hard power assets (such as a large standing army) may only be able to exert limited regional influence so long as they lack the means of effectively projecting their power on a global scale. Generally, only a select few states are able to overcome the logistical difficulties inherent in the deployment and direction of a modern, mechanized military force.

While traditional measures of power projection typically focus on hard power assets (tanks, soldiers, aircraft, naval vessels, etc.), the developing theory of soft power notes that power projection does not necessarily have to involve the active use of military forces in combat. Assets for power projection can often serve dual uses, as the deployment of various countries’ militaries during the humanitarian response to the 2004 Indian Ocean earthquake illustrates. The ability of a state to project its forces into an area may serve as an effective diplomatic lever, influencing the decision-making process and acting as a potential deterrent on other states’ behavior.
Power Projection @wikipedia

政治学においてのパワーの定義は,「他者の行動に影響を与える能力」である。言い換えれば,他者を自分の意のままにコントロールすることが可能ならば,それはパワーという言葉の範疇にくくることが出来る。従来は,パワーといえば軍事力などのハードパワーを指すことが多かったが,現在の世の中では,国際政治の舞台でいかに効果的に政治・経済・軍事・情報などのパワーを行使するかという点が重要視されている。ジョセフ・ナイの唱えるソフト・パワー,スマート・パワー論は,軍事力・情報力・恫喝・娯楽・などを複合したパワーのオペレーション方法と言えるかも知れない。

ソフト・パワー(Soft Power)とは、国家が軍事力や経済力などの対外的な強制力によらず、その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得し得る力のことである。対義語はハード・パワー。
ソフト・パワー @wikipedia

小国にもかかわらず圧倒的な発言力を握っているイスラエルなどは(ロビー活動や,金融支配,ホロコーストなどの宣伝戦などを通じ)総合的なパワーを有していると言える。

無形化世界の戦略論 (4) 無形化されたパワーの席巻

Posted by admin on 18 3月 2009 | Tagged as: Strategy + Geopolitics

無形化されたパワーによる拮抗状態の突破( 無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか (下) )

無形化されたパワーによる拮抗状態の突破( 無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか (下) )

(3)で紹介した無形化パワー

(i) 経済力 (=ランドパワー)
(ii) 研究機関の知的影響力 (=シーパワー)
(iii) メディアの力 (=エアパワー)

がなぜこれほどまでに力をつけてきたのだろうか。

一つには,冷戦下における西側と東側の軍事的拮抗状態を突破するための西側の戦略が成功したことが挙げられる。冷戦下においては,西側・東側両陣営が核戦力の軍拡競争を行い,一触即発の危機が続いたものの,結果として互いの目論見である軍事力を背景として相手に譲歩を迫る恫喝戦術はことごとく失敗に終わった。それは,両陣営が強力な抑止力を互いに有していたためである。

戦略核,戦術核といった破壊力が強大な兵器は,通常戦力に対しては強い抑止力を持つ。例えば,戦車部隊で国境を突破した敵に対し,戦術核で報復するといった用途である。

しかし,経済力やメディアなどの無形化されたパワーに対しては,核戦力は抑止力を持たない。経済戦争や,メディアによる報道合戦があったとしても,ただちにそれに対する報復として核戦争を誘発するという自体までエスカレートさせるのには非常に勇気が必要となるからである。その結果,無形化されたパワーは軍事的拮抗状態においても自由に行動することができ,その攻撃を受ける側は保護貿易やジャミング(電波妨害)など消極的な対応をせざるをえない。

その結果,冷戦においては西側の経済力・メディアが東側を圧倒し,最終的には東側体制崩壊という勝利を収め,無形化されたパワーというものの存在が大きくクローズアップされることとなった。

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無形化世界の戦略論 (3) 無形化世界におけるパワー

Posted by admin on 14 3月 2009 | Tagged as: Strategy + Geopolitics

無形化世界においても,過去の陸海空軍三軍と類似の特徴を持つパワーが存在する。それが,
(i) 経済力
(ii) 研究機関の知的影響力
(iii) メディアの力

の3つである。それぞれのパワーを特徴づける要素を見ていこう。

経済力とはどのようなパワーか

経済力は,国力の基礎であり,貿易・生産・消費など日常生活に密接に関わっている。
長沼氏によればは,経済力の特性は,以下のようなものである。

  • 経済活動に動員される人員がきわめて多い(=マンパワーが大)
  • 経済活動は,計画されてから投資がなされ,実際に動き出すまで時間がかかる(=速度が小)
  • 経済活動は,生活圏に密接に関わっている(=影響力が直接的)
  • 経済活動は,ひとたび動き出せば,継続的に影響力を維持し続けることが可能である。(=常駐能力あり)

この特徴は,人員が多く,速度は遅いものの,ひとたび動きだし陣地を獲得すれば,長期間に渡って生活圏を直接的に支配し続けることが可能な「陸軍,ランドパワー」に相当する。

陸軍

陸軍

研究機関とはどのようなパワーか

シンクタンクや大学などの研究機関の主な仕事は,産業の基盤技術の開発,経済政策の裏付けや,政策の詳細な検証・立案,ルール策定などを通じて社会の方向性を決め,発展の可能性を広げることである。

  • 研究機関は,少数精鋭の場合が多く,動員される人員は少ない(=マンパワーが小)
  • 研究機関は,研究開始から成果を出し,影響力が生じるまでに時間がかかる(=速度が小)
  • 研究機関は,あくまでアカデミズムの分野の話で,生活圏には直接には影響はない(=影響力が間接的)
  • 研究機関は,ひとたびその分野での成果・権威を獲得すれば,継続的に影響力を維持し続けることが可能である。(=常駐能力あり)

この特徴は,速度が遅く,あくまで生活圏には間接的にしか影響を及ぼすことはできないものの,海上封鎖などで間接的に長期間に渡って,生活圏・交易圏を支配できるという点で,「海軍,シーパワー」に相当する。

例えば,アカデミズムの分野や,国際会議などにおいて強い発言力を獲得できれば,その後長期間に渡って絶大な影響力を行使し続けることが可能(例えば,国際法や国際規格,スポーツルールなどにおけるスタンダード策定権など)である。

海軍

海軍

メディアとはどのようなパワーか

同様に,

  • メディアは,少人数でも報道可能で,動員される人員がきわめて少ない(=マンパワーが小)
  • メディアは,即座に情報を発信することができる(=速度が大)
  • メディアは,人々が目に触れる情報をコントロールすることで生活圏に密接に関わっている(=影響力が直接的)
  • メディアは,同じテーマで人々の関心を惹きつけておくことができず,テーマを転々と変更していく。(=常駐能力なし)

この特徴は,少数精鋭で素早く敵地を爆撃し,多大な影響を与えることができるが,敵地に常駐することのできない「空軍,エアパワー」に相当する。

空軍

空軍

参考図:各国経済力比較
経済力

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無形化世界の戦略論 (2) 無形化世界

Posted by admin on 08 3月 2009 | Tagged as: Strategy + Geopolitics

無形化世界とは何か

現代では形のある物理的な軍事力のようなパワーが主役の座を降り,経済力をはじめとする無形化したパワーが世界を動かす主役となった。そして現代では時を経るごとにコンピューターの中の数字が一種の仮想的な現実として力を強め,物質そのものを圧倒し始めている。[無形化世界の力学と戦略

第二次世界大戦以後の世界情勢は,東西陣営による核ミサイル軍拡競争による恐怖の均衡によって,直接的に軍事力を使用する有形の戦争は減少した。核兵器というジョーカーによる通常兵器の無力化である。これがパワーの無形化である。そして,無力化された通常兵器に取って代わるものとして,新たにパワーとして頭角を現して来たのが
(i)   国家・企業間での通貨戦争や貿易戦争などの経済戦争,
(ii)  大学・シンクタンクなど知的機関による学問領域における正統性争い・覇権争い,
(iii) TVや新聞,報道機関などメディアを通じた報道戦争・イデオロギー戦争である。
これらの争いでは,軍事力を行使しないため,「見えざる戦争=無形化世界における戦争」である。大規模戦争が勃発しなくなった昨今では,これらの無形化世界における戦争こそが重要なのであり,その可視化と定量化,そして無形化世界での戦略を構築すべきというのが長沼氏の意見である。

無形化したパワー

無形化世界におけるパワーとして,長沼氏が挙げるものは以下の三つである。
(i)  経済力
(ii) 研究機関の知的影響力
(iii) メディアの力

これらの漠然とした無形化したパワーの特徴を捉える上で,理解の手がかりとなるのが,過去の陸海空軍とのアナロジー(類似性)である。過去の有形のパワーと無形化したパワーの間にはある程度の類似性があり,その類似性に基づいて無形化世界の特徴を浮かび上がらせようというのが,無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか (下) (単行本) の一貫したテーマである。このアナロジーを用いることで,過去に蓄積されてきた(有形の)戦略論・戦術論・地政学などの知的資産を活用することができ,無形化世界における戦略を考える土台として使えることになる。

無形化世界

無形化世界の俯瞰図

書籍購入方法

上記「無形化世界の力学と戦略」は,現在Amazonには下巻のみしかないので,購入を希望する方は通商産業社 内の長沼伸一郎氏著作物のページにご連絡ください。
下巻についてはAmazonで購入できます。
無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか (下) (単行本)

無形化世界の力学と戦略無形化世界の力学と戦略

無形化世界の戦略論 (1) 著者紹介

Posted by admin on 08 3月 2009 | Tagged as: Strategy + Geopolitics

長沼伸一郎氏の「無形化世界の力学と戦略」にて展開されている,現在の無形化世界における戦略論を紹介していきたい。

長沼伸一郎氏とは

長沼伸一郎氏は,「物理数学の直観的方法」という数学参考書を若干26歳のときに世に出したベストセラー数学作家である。その後,経済や軍事,建築などの分野を,理系の視点から解析した書籍を出版している。
参考:「ステルス・デザインの方法―イルカの記憶と都市の閉塞感を減らす技」

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無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか (下) (単行本)

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